Hugo Future Imperfect Slim

株式会社 微分

このブログでは、国際開発や教育、SGDにまつわるテーマを扱います。

    Tsuyoshi Okawa

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    今日の内容について

    本日は2020年1月に学術誌「東南アジア研究」に投稿された”セクシュアリティと女性の身体にからみるマレーシアにおける「女性器切除」”の解説をさせていただきます。株式会社微分共同設立者の吉田は理系の人間ですが、私は文系の人間ですので私が取り扱う論文の多くは人文科学の分野からの選定になります。より具体的な分野で挙げますと、経済学(ミクロ・マクロ、計量経済、開発経済)、ジェンダー学、教育学、開発学、などが対象となります。

    今後、微分の成長とともに読者も増え、このブログを通して活発な議論が起きるようになればと考えております。

    FGM(Female Genital Mutilation:女性器切除)とは

    女性器切除とは「女子割礼」とも呼ばれる、女性器の一部または全部を切除する行為とされています。現在でもアフリカの30ヵ国とアジアや中等のいくつかの国において実践されれいるとされている。その起源は一般に、処女性、貞節、女性の性欲のコントロール、また、そのコミュニティでの社会秩序を守るためだとされています。

    WHOはFGMを4つのレベルに分類しています。レベル1では、クリトリスの一部または全部の切除(クリトリデクトミー)、レベル2、クリトリスの切除と小陰唇の一部あるいは全部の切除(エクシジョン)、レベル3、外部器の一部または全部の切除および膣の入り口の縫合による狭小化または封鎖(陰部封鎖)、レベル4はそれ以外の全ての切除を指します。それ以外の全てとは、「女性器を傷つける医療上の理由ではない全ての行為で、切り込みを入れること、こそげとること、腐食させたり焼灼すること」とされています。

    一昔前の1980年代ぐらいまでは、FGM「女性器切除」ではなく、Circumcision「割礼」という言葉が使われていました。しかし、NGOであるInter-Africa Commitee on Traditional Practices(IAC)が、割礼という言葉では性器の切除を十分に捉えられていないとし、1990年にエチオピアのアディス・アベバにおいて行われた総会においてFGMの用語を使用することを勧告しました。人類学者であり、元東京外国語大学教授であった大塚は、「女子割礼」という言葉には、伝統的文化であるというニュアンスが多く含まれているのに対し、「女性器切除」は、それが尊重される伝統文化ではなく、女性に対する身体的な暴力であると強調します。

    また、FGMについての著書のある岡によれば、「Mutilation」という英単語には腫瘍を切除するという時に使用する「切除」とは異なり、「身体を不健全なものにする」というニュアンスが強くあると言います。そのため、少なからず多くの人類学研究者、ジェンダー学研究者は、「アフリカの女性たちが、切除され、落ちぶれた身体として象徴されている」と指摘し、岡はその著書の中で、FGMではなく、「Female genital surgery」という言葉を使用しています。また、FGC「Female genital cutting」と表現する研究者も一定数見られます。こうした現状を鑑みてユニセフでは2013年の報告書のタイトルで「Female Genital Mutilation/Cutting」とスラッシュをつけて表現しています。このように、FGMの問題では、「普遍主義」VS「文化相対主義」、「人権」VS「伝統文化」という対立図式が繰り広げられてきたことがわかります。

    この論文が提示する貴重な示唆

    本研究は、マレーシアの人々はFGMに対してどのような認識を持っているのかを問の設定とし、そのことが女性の身体とセクシュアリティの管理の進展とどのように繋がっているかを明らかにすることでした。

    これまでのグローバルなFGMの議論の根幹は、アフリカに起因するものでした。そのため、マレーシアにおけるFGMの実践に関する議論はアフリカのそれと同様のものであるといった程度に終始していました。しかし、現地のマレーシア人らは、アフリカ諸国においてFGMが実践されていることを知りません。さらに、FGMが宗教に起因するという言説も、実際にコーランのどこにFGMに関する記述があるのかを知っている人はいませんでした。このことから示唆刺されることとしては、マレーシアにおけるFGMというカテゴリーは独立して成立している、換言すると、マレーシアにおけるFGMの実践はそれを単体として捉える視点が必要だということです。

    その一方で、アフリカに起因するFGMとマレーシアにおけるFGMは、セクシュアリティをめぐる言説という観点から見ると、同じ文脈で捉えることができると著者は述べています。アフリカで残存するFGMは女性のセクシュアリティの管理、言ってみれば、クリトリスを切除することで女性の性欲が抑制され、それが婚姻前の性交の蓋然性を減らすことにつながります。マレーシアも同様に、宗教的にも婚姻前の性交がタブーとされ、その流れの中でFGMが位置付けられてきたということです。

    最後に

    今後も一つの論文をとりあげ、内容を簡略的に要約し紹介していこうと思います。ありがとうございました。

    コメントやご意見をお待ちしております。

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